左利きの子が数字を書くときに、助けになること

ななめに傾けた紙に、左手で書いている子ども。
この記事の内容
  1. 利き手によって、数字の教え方はなぜ変わる?
  2. 本当に役立つ2つの調整
  3. 書きやすい場所のつくり方
  4. 右利きのふつうの置き方と、左利きの調整
  5. 右手に直したほうがいい?
  6. 学校と暮らしの中で、左利きの子が困りやすいところ
  7. 数字の鏡文字と関係はある?

字の書き方の教え方の多くは、知らず知らずのうちに右利きの子を前提にしています。左利きの子が右利きと同じ紙の置き方や鉛筆の持ち方をまねすると、書くこと本来のむずかしさ以上に苦労することになります。

結論から言うと:いちばん効く調整は2つです。紙を右利きとは反対向きに傾けること(左側が上がるように30度ほど)と、鉛筆を先から少し離れたところで持つこと。書く手で、自分が書いている字をかくしてしまわないようにするためです。

どちらも、子どもを直すのではなく、書く環境を整えるための工夫です。この記事では、実際に役立つ具体的な調整と、してはいけないひとつのこと、つまり生まれつきの利き手を変えようとすることについてまとめます。

私たちは99 Math Animalsの手書き認識をつくっているので、どんな持ち方や角度で書かれた数字も、いつも見ています。アプリを使ってくれる子の中にも左利きの子は少なからずいます。左利きの子が書きやすくなるコツは、右利きの教え方を左右反対にしただけのものではありません。ここでは、当て推量ではなく、作業療法の考え方にもとづいた調整を紹介します。

利き手によって、数字の教え方はなぜ変わる?

算数のノートは横書きで、数字も式も左から右へ書いていきます。右利きの子は、書いたものから遠ざかる向きに鉛筆を引いていくので、何もかくれず、手が視界をさえぎることもありません。左利きの子は、同じ左から右へ鉛筆を押していく形になるので、何も工夫しなければ、書いたばかりの数字の上を手が通っていきます。書いた字がこすれて手の横が黒くなる、手首が内側に不自然に曲がる、自分の手をよけて見ようと顔を紙に近づける。保護者が気づくこうした困りごとの多くは、このひとつのちがいから来ています。

書きながら鉛筆を持っている、子どもの手のアップ。
右利きの持ち方より少し後ろを持つと、書いている数字が自分の手でかくれません。

本当に役立つ2つの調整

紙の角度。紙の左側が上がるように、まっすぐの状態から時計回りに30度ほど傾けます。その子が自分の字をいちばん見やすいなら、45度くらいまで傾けてもかまいません。右利きでよく教わるのとは反対の傾きです。左利きの子の中には、自分の手をよけて見ようとして、手首をかぎのように内側へ曲げて書くクセがつく子がいますが、これにはこの紙の角度がいちばん大きな解決策になります。

鉛筆を持つ位置。鉛筆の先から2.5〜3.8cmほど、だいたい指2本分くらい後ろを持たせます。右利きのふつうの持ち方より少し後ろです。指が先のほうへずり下がってきてしまう子には、ちょうどよい位置に小さなシールを貼っておくと、目で見てわかる目印になります。

書きやすい場所のつくり方

  • 書き始める前に紙を傾ける。行きづまってから直すのではなく、書く時間の最初に角度を決めておきます。
  • ひじの場所をあける。食卓ならテーブルのはしや、右利きのきょうだいの左側に座らせると、ひじどうしがぶつかりません。
  • 少し高く、傾いた面も助けに。クリップボードやバインダーを立てかけたり、斜面台を使ったりすると手首がまっすぐに保ちやすく、低く平らなところで書くときにできやすい手首の曲がりが減ります。
  • 数字だけでなく、手首を見る。手首が内側に巻きこんでいたら、たいていは紙の角度を直すサインです。持ち方だけで直そうとしないでください。
  • 鉛筆は短くなりすぎる前に交換を。短い鉛筆では、先から離れたところを持つことができません。指2本分うしろを持てる長さがあるか、ときどき筆箱をのぞいてあげてください。
テーブルの上でななめに傾けた紙に、子どもの左手が数字を書いている。
いちばん効くのは紙の角度です。書き始める前に、左側を上げて30度ほど傾けておきます。

右利きのふつうの置き方と、左利きの調整

右利きでよくある置き方左利きの調整
紙の角度反時計回りに20〜30度ほど、右側が上がるように時計回りに30〜45度ほど、左側が上がるように
鉛筆を持つ位置先に近く、1.5〜2cmほど後ろもう少し後ろ、2.5〜3.8cmほど。手が視界をさえぎらないように
手首の姿勢自然にまっすぐのことが多いかぎのように曲がった手首に注意。たいていは持ち方ではなく、紙の角度のサイン
となりに座る位置どちら側でもよい右利きの子の左側に座ると、ひじがぶつからない
練習プリントのお手本行の左はしにあり、書く手がお手本から離れていくお手本が右はしにあるものを。左はしだと、書く手がお手本をかくしてしまう
テーブルで鉛筆を持つ子どもの手に、そっと手を添える保護者の手。
ここでは、書いた字を直すより、書く環境を少し整えてあげるほうがずっと効きます。

右手に直したほうがいい?

いいえ。左利きの人は1割ほどといわれ、30人のクラスなら2〜3人いてもめずらしくありません。日本ではかつて、せめてお箸と鉛筆だけは右手で、と左利きを直すことが当たり前のように行われた時代があり、いまでも祖父母の世代から「直したほうがいいのでは」と言われることがあるかもしれません。けれども利き手は早い時期に決まるもので、たとえやさしくであっても、無理に変えるものではありません。上で紹介した調整は、左利きの子が自分の利き手のまま、無理なく気持ちよく書けるようにするためのものです。環境を整えても書くことがとてもつらそうなら、それは利き手を変える理由ではなく、担任の先生や作業療法士に相談するきっかけです。

学校での教え方にも、知っておきたい点があります。信州大学の研究課題でも、学習指導要領や書写の教科書は左利きの書字とその指導にふれていない、と指摘されています。3年生から始まる毛筆の書写は、筆の運びが右手を前提にしている面があり、先生によって考え方が分かれることもあります。左手のままでよいか、毛筆だけ右手で試してみるかは、お子さま本人の気持ちを第一に、担任の先生と相談して決めてください。鉛筆で書く毎日の字まで右手に変える必要はありません。

家族の中で左利きがその子だけのときは、見本の見せ方にも少し工夫がいります。向かい合わせに座ると左右が反対に見えて分かりにくいので、子どもの横に並び、紙の角度や書き始めの位置を同じ向きから見せてあげると伝わりやすくなります。

学校と暮らしの中で、左利きの子が困りやすいところ

書くこと以外にも、右利きを前提にした道具はたくさんあります。少し準備しておくと、子どもの小さなストレスが減ります。

  • はさみと定規。右利き用のはさみは、左手で使うと刃がかみ合わず、切る線も見えにくくなります。文房具店には左利き用のはさみや、右から左へ目盛りがふられた定規もあります。
  • 手の汚れ。横書きの算数ノートでは、手の側面が書いたばかりの字の上を通るので、手も紙も黒くなりがちです。学校でよく使うBや2Bの鉛筆はとくに汚れやすいので、まずは紙の角度を見直し、それでも気になれば先生に相談してみてください。
  • 給食やお箸。お箸は左手のままでかまいません。並んで食べるときは、右利きの子とひじがぶつからない左はしの席だと、本人も周りも食べやすくなります。
  • 先生への伝え方。学年の初めに、連絡帳などで「左利きです」とひとこと伝えておくと、席の配置や道具の貸し借りで気にかけてもらいやすくなります。

数字の鏡文字と関係はある?

直接の関係はありません。数字の鏡文字は、左利きの子にも右利きの子にも7歳ごろまでよく見られ、利き手そのものが原因になったり、防いだりするわけではありません。この記事の調整は書きやすさと読みやすさのためのもので、鏡文字を直すためのものではありません。数字を反対に書く左利きの子は、右利きの子と同じ、よくある段階を通っているところです。書き順も、学校でほかの子と同じものを習えばだいじょうぶです。

保護者の方からよくある質問

左利きの子は、字を書くのが遅いもの?

とくに紙の角度や鉛筆を持つ位置を調整する前は、少し遅くなりがちです。書く環境を利き手に合わせると、その差の多くは縮まります。力のちがいというより、合わない置き方のせいで書きにくくなっていることがほとんどです。

左利きは右手に直したほうがいい?

直す必要はありません。利き手は早い時期に決まり、変えることはすすめられていません。目指すのは、紙の角度や鉛筆を持つ位置など、書く環境をその子の利き手に合わせることで、その逆ではありません。

左利きの子に合う紙の角度は?

まっすぐの状態から時計回りに30度ほど、左側が上がるように傾けます。右利きでよく教わるのとは反対の傾きです。もっと傾けたほうが見やすい子もいるので、45度くらいまでは本人の書きやすさに合わせてください。

左利き用の鉛筆や補助具は役に立つ?

役に立つこともあります。主な効果は、鉛筆を先から離れたところで持つようにうながすことです。ただ、たいていは道具そのものより紙の角度のほうが大事で、ふつうの鉛筆でも紙の角度が合っていれば、まっすぐ置いた紙で特別な補助具を使うよりうまくいきます。

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