子どもの字が汚いのは、書字障害(ディスグラフィア)のサイン?

この記事の内容
5歳、6歳、そして7歳でも、字が汚いこと自体はほとんどの場合ごく普通で、書字障害のサインではありません。
結論から言うと:ととのった字を同じ大きさで書き続けるための指先のコントロールは、小学校の低学年のあいだもずっと育ち続けています。文字の大きさがそろわない、線がよろよろする、マス目からはみ出す、といった姿はこの年齢ではよくあることで、それだけで何かを判断する材料にはなりません。
書字障害(ディスグラフィア)は実際にある学びの困難ですが、あてはまるのは一部の子どもです。そして、ウェブサイトのチェックリストと手書きの字を見くらべてわかるものではなく、専門家の評価によってはじめてわかるものです。この記事では、字の乱れがどこまで普通の範囲なのか、書字障害とは実際にどういうものか、そして専門家に相談したほうがよいのはどんなときかをまとめます。
私たちは99 Math Animalsの手書き認識をつくっているので、ていねいな字からかなり自由な字まで、子どもの字を毎日たくさん見ています。紙の上では心配に見えても、その多くは、とてもむずかしいことをまだ練習している途中の、ふつうの手です。ここでは、お子さまに点数をつけるようなチェックリストではなく、発達の幅、書字障害のわかりやすい説明、そして相談の目安を紹介します。
5歳、6歳、7歳で字が汚いのは普通?
はい、ほとんどの場合は普通です。手の小さな筋肉、鉛筆をしっかり持つ力、それを思いどおりに動かす協調の力は、書き始めてから何年も育ち続けます。字がかたむく、大きさが字ごとにばらばら、行が曲がっていく、筆圧が強すぎたり弱すぎたりする。どれも小学校の低学年ではよくあることです。見たいのは、ある1日のきれいさではなく、1年のあいだに目に見えてよくなっているかどうかです。
日本の1年生は、1年のうちにひらがな、カタカナ、さらに80字の漢字を、マス目のノートに書き順どおりに書くことを求められます。国語の書写では「姿勢や筆記具の持ち方を正しくして書くこと」や「筆順に従って丁寧に書くこと」を学びます。正直に言って、6歳の手にはかなりの量です。とめ・はね・はらいで丸がもらえない日があっても、それは手がまだ育っている途中だというだけのことです。なお、文化審議会国語分科会の常用漢字表の字体・字形に関する指針(2016年)は、手書きの字の形には幅があり、とめ・はね・はらいのような細かなちがいだけで漢字を誤りとはしない、という考え方を示しています。

書字障害(ディスグラフィア)とは、そもそも何?
書字障害は、手で書くという作業そのものに影響する、特定の学びの困難です。医学的には、限局性学習症(いわゆる学習障害、LD)のうち、書くことに困難があるタイプにあたります。文部科学省は学習障害を「基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態」と定義しています。
現れ方はさまざまです。たとえば、ふつうならだんだんらくになってくる年齢を過ぎても、字を書くことがとても骨の折れる、疲れる、ときには痛い作業のままである。頭の中の考えを紙に書く力が、同じ内容を口で話す力よりも目立って遅れている。しっかり練習を続けても、字の形や字と字の間隔、マス目や行に収めることが、ほとんどよくならない。日本語では、漢字の形がなかなか覚えられない、板書を写すのにとても時間がかかる、という形で気づかれることもあります。
書字障害は医学的にも認められた困難で、「字が雑」という見た目だけを指すことばではありません。そして、字が汚い子のうち、実際に書字障害がある子はほんの一部です。
もっとくわしく知りたいときは、国の発達障害ナビポータルが、保護者向けのわかりやすい入り口になります。相談に行く前にも、相談と並行しても、落ち着いて読める情報がまとまっています。
よくある字の乱れと書字障害は、どこがちがう?
| よくある字の乱れ | 相談してみる価値があるとき | |
|---|---|---|
| 時間がたつと | ゆっくりでも、1年のあいだに少しずつととのっていく | しっかり練習を続けても、目に見える変化がほとんどない |
| 書くときの負担 | その年齢なりの大変さ | ふつうはらくになる時期を過ぎても、とても疲れる・遅い・手が痛い状態が続く |
| 話せることと書けること | 書いた内容が、口で話せる内容とだいたい合っている | 口で説明できることと、紙に書けることのあいだに、大きな差がずっとある |
| どうやって確かめるか | 確かめる必要はない。ふつうの発達 | 専門家による評価。家庭でのチェックリストではない |

気になったら、まずすること
- まずは時間と練習を。ふだんどおり書く練習を1年続けるうちに、一時は心配に見えたことの多くは自然に解決していきます。
- 1日ではなく、流れを見る。1枚のプリントが乱れていても、それだけではほとんど何もわかりません。何か月たってもよくならないかどうかのほうが、ずっと大事な手がかりです。
- 検索する前に、担任の先生に。先生はお子さまの字を、同じ年の何十人もの字と並べて見ています。連絡帳でひとこと聞く、個人面談で見てもらうだけで、普通の範囲かどうかをはっきり教えてくれます。
- 心配が残るなら、評価について聞く。学校の特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラー、かかりつけの小児科医、地域の発達障害者支援センターや教育相談の窓口に相談すると、必要に応じて、指先の動きや書く力を直接みる作業療法士などの専門家や、発達をみる医療機関につないでもらえます。保護者やウェブサイトだけで判断できることではありません。
- 家では、ハードルを低く。持ちやすい鉛筆、お気に入りの道具、短くてプレッシャーのない練習は、原因が何であっても助けになります。
もし書字障害やほかの学びの困難がわかっても、学校でできることはあります。学習障害は、ふだんは通常の学級で学びながら一部の時間だけ別の教室で指導を受ける「通級による指導」の対象になっています。マス目の大きいノートを使う、板書をタブレットで撮影する、書く量を調整するといった工夫を、合理的配慮として学校と話し合える場合もあります。発達障害者支援センターは、すべての都道府県と政令指定都市に置かれています。

家でできる、書くことをらくにする工夫
字の乱れの原因が何であっても、家で書く負担を軽くする工夫は役に立ちます。どれも、きれいに書かせるためではなく、書くことをいやにさせないためのものです。
- 鉛筆と芯を見直す。1年生は学校からBや2Bの鉛筆を指定されることが多く、濃い芯は弱い筆圧でも線が出やすくなります。三角形の鉛筆や、指の位置を教えてくれる補助グリップが合う子もいます。
- 机と椅子の高さを合わせる。足が床やふみ台にしっかりつき、ひじを机にのせたとき肩が上がらない高さが目安です。姿勢が安定すると、指先の細かい動きに力を回せます。
- 指先を使う遊びを増やす。折り紙、あやとり、粘土、洗濯ばさみでの遊び、お箸で豆をつまむ遊び。書く練習を増やすより、このほうが楽しく指先が育つこともあります。
- 書く量を分ける。漢字の書き取りや日記が長いときは、途中で休けいを入れる、話した内容を先に大人が聞いてから書く、などで、手と頭の負担を分けます。
チェックリストについて、ひとこと
ネットには「書字障害のサイン」のリストがたくさんあります。字の形がくずれる、字の間隔がばらばら、書くのが遅い、などです。私たちは、あえてここにそのリストを載せていません。そこに並ぶ項目のほとんどは、幼児期から低学年のどこかの時点で、ごくふつうの手書きにもあてはまるからです。いくつかあてはまっても、それだけではほとんど何もわからず、いらない心配を生むことがあります。本当に気になるときに役立つ次の一歩は、症状を数えることではなく、担任の先生や作業療法士などの専門家と話すことです。
保護者の方からよくある質問
字が汚いのは書字障害のサイン?
それだけでは、ちがいます。字の乱れは小学校の低学年まではとてもよくあることで、たいていは指先の発達がまだ途中だというだけです。書字障害は、字の見た目ではなく、専門家の評価によってわかる特定の学びの困難です。
何歳になれば字はきれいになる?
決まった区切りはなく、8〜9歳ごろまで目に見えて上達し続ける子も多くいます。ある時点のきれいさより、1年のあいだに書くことが少しずつらくに、読みやすくなっているかを見てください。
書字障害かもしれないと思ったら、どこに相談する?
まずは担任の先生に。同じ年の子とくらべて見てもらえます。心配が残るときは、学校の特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラー、かかりつけの小児科医、発達障害者支援センターなどに相談すると、必要に応じて作業療法士や専門の医療機関につないでもらえます。
書くことが苦手な子は、学校でどんな支援を受けられる?
学習障害は通級による指導の対象で、ふだんは通常の学級で学びながら、一部の時間に専門の指導を受けられます。マス目の大きいノート、板書の撮影、書く量の調整などを、合理的配慮として学校と話し合える場合もあります。



