算数が苦手なだけ?それとも算数障害(ディスカリキュリア)?

この記事の内容
5歳、6歳、7歳で算数にイライラしたり、混乱したりするのは、ほとんどの場合ごく普通のことで、算数障害のサインではありません。
結論から言うと:数の感覚や、たし算・ひき算の答えをすぐに思い出す力は、小学校低学年のあいだずっと育ち続けています。数えるのがゆっくり、数の大小をよく迷う、算数を避けたがる。どれもこの時期にはよくあることで、それだけで何かを判断できるものではありません。
算数障害(ディスカリキュリア)は、実際にある、はっきりとした学びの特性です。推計には幅がありますが、海外ではおよそ5〜10%の子どもにみられるともいわれ、読み書きの障害(ディスレクシア)と同じくらいの範囲です。そして、それを見きわめるのは専門家による評価で、ウェブサイトのリストとくらべることではありません。この記事では、ふつうの「算数の苦手」の幅、算数障害とは実際にどういうものか、そして専門家と話す価値があるのはどんなときかをまとめます。
私たちは99 Math Animalsで、数を数えたり数字を書いたりする仕組みをつくっているので、自信のある子もない子も含めて、子どもの数への向き合い方に大きな幅があることを毎日目にしています。その場では心配に見えることの多くは、何年もかけて育つ数の感覚を、まだ組み立てている途中のごく普通の子の姿です。ここでは、お子さまを採点するようなチェックリストではなく、発達の正直な幅と、算数障害のわかりやすい説明、相談する価値のある場面をお伝えします。
5〜7歳で算数が苦手なのは普通?
はい、ほとんどの場合は普通です。数の感覚、つまり数のことばを唱えられるだけでなく、量を「感じる」力は、数え始めてから何年も育ち続けます。数えるのがゆっくり、小さなたし算にも指や物が必要、ある日言えた答えを次の日は忘れている、算数の遊びをはっきり避ける。どれも、小学校低学年のあいだによく見られる姿です。見るべきなのは、ある時点ですらすらできるかどうかではなく、1年を通して、ゆっくりでも確かに伸びているかどうかです。

算数障害(ディスカリキュリア)とは?
算数障害は、数の感覚や計算の力に関わる、特定の学びの特性です。現れ方はいろいろで、小さな数でも2つの数のどちらが大きいかを判断するのがずっとむずかしい、4+2のような計算がどれだけ練習しても自動的に出てこない、ふつうの授業と本気の練習を続けても算数の力がほとんど伸びない、といった形をとります。
日本では、文部科学省が学習障害(LD)を、全般的な知的発達に遅れはないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」のうち特定のものの習得と使用に著しい困難がある状態として説明しています。算数障害は、このうち「計算する」「推論する」に関わるものです。医学的には、診断基準(DSM-5)の「限局性学習症(限局性学習障害)」のうち、算数の困難をともなうものにあたります。男女の差はあまりないとされています。実際にある、医学的にも認められた特性で、「算数が苦手」の言いかえではありません。そして、算数で苦労している子のうち、算数障害がある子は一部です。
参考までに、文部科学省が2022年に行った調査では、通常の学級に在籍する小・中学生のうち、「計算する」または「推論する」に著しい困難を示すと担任の先生などが回答した子は3.4%でした。ただしこれは先生の回答にもとづく推定で、医師の診断や専門家の判断ではありません。算数障害のある子の割合そのものではなく、学校で特別な支援が必要かもしれない子の目安として読むべき数字です。
よくある「苦手」と、相談してみたいサインのちがい
| よくある算数の苦手 | 相談してみる価値があるサイン | |
|---|---|---|
| 時間がたつと | ゆっくりでも、練習するうちに少しずつ慣れていく | 本気の練習を続けても、目に見える伸びがほとんどない |
| 数の感覚 | 量をくらべるときにときどき迷うが、少し考えると正せる | 小さな数でも、2つの数のどちらが大きいかがずっとわからない |
| 計算の答え | くり返すうちに、年齢相応のペースで答えが定着していく | 4+2のような計算が、どれだけ練習しても自動的に出てこない |
| どうやって確かめる? | 確かめる必要はなく、ふつうの発達 | 専門家による評価。家庭のチェックリストではない |

迷ったときにできること
- まずは時間と練習を。プレッシャーのないふつうの練習を1年ほど続けると、ある時点で心配に見えたことの多くは解消します。
- 1日ではなく、流れを見る。算数がうまくいかなかった1日には、あまり意味がありません。何か月も伸びが見られないことのほうが、ずっと多くを教えてくれます。
- ネットで調べる前に、担任の先生に。先生は、同じ年の子どもたちの中でのお子さまの様子を見ていて、いま見えていることが普通の範囲かどうかを率直に教えてくれます。
- 学校の中の相談先も使う。学校には、特別支援教育コーディネーターとして指名された先生がいて、スクールカウンセラーに相談できる学校も多くあります。担任の先生を通して、または直接、相談できます。
- 心配が続くなら、専門機関での評価を。算数障害を判断する、ひとつだけのテストはありません。総合的な評価では、算数の具体的な力や全体的な認知の力を調べ、不安や注意の特性など、似て見えるほかの原因も確かめます。相談先には、地域の発達障害者支援センター、教育委員会の教育相談、発達を専門に診る小児科や児童精神科などがあります。保護者やウェブサイトだけで判断できることではありません。
- 学校での支援を知っておく。通常の学級に在籍したまま、一部の時間だけ別の教室で特性に合った指導を受ける「通級による指導(通級指導教室)」を利用できる場合があります。学習障害は2006年から、この通級による指導の対象になっています。問題の量を調整するなどの配慮について、学校と話し合うこともできます。
- 家では、プレッシャーなしで。数える本物の物、タイマーなし、短い時間。原因が何であっても、これが自信を育てます。
担任の先生への相談は、個人面談の時期を待たなくてもかまいません。連絡帳で「算数のことで少しご相談したいです」と伝えれば、時間をとってもらえることがほとんどです。そのとき、家での様子を短くメモしておくと、話がぐっと具体的になります。どんな問題で止まるのか、どのくらいの時間がかかるのか、そのとき何と言っていたか。先生が学校で見ている姿と、家で見えている姿を重ねることが、いちばん確かな出発点になります。

チェックリストについて、ひとこと
インターネットでは、「算数障害のサイン」としてリストを見かけることがあります。文章題が苦手、時計を読むのがむずかしい、方向音痴、などです。私たちは、あえてここにリストを載せていません。そうしたリストのほとんどの項目は、幼児期から低学年のどこかの時点で、まったく普通の発達にも当てはまるからです。いくつか当てはまっても、それだけではほとんど何もわからず、必要のない心配を生むことがあります。本当に心配なときに役に立つのは、当てはまる項目を数えることではなく、担任の先生との話し合いや、専門家による評価の相談です。
算数への不安(算数ぎらい)と同じもの?
いいえ。外からは似て見え、重なることもありますが、別のものです。算数への不安は感情の反応で、本当はある算数の力が、算数に対するストレスや怖さにじゃまされている状態です。一方、算数障害は、数の感覚そのものの育ち方のちがいです。どちらか一方の子も、両方の子も、どちらでもない子もいて、それを見分けられるのはきちんとした評価です。外から見て推測しても、あてにはなりません。
保護者の方からよくある質問
算数が苦手なのは、算数障害のサインですか?
それだけでは、サインとはいえません。小学校低学年で算数に苦労するのはとてもよくあることで、たいていは数の感覚がまだ育っている途中です。算数障害は専門家の評価で見きわめる特性で、どれだけ苦労しているかで決まるものではありません。
算数障害は、どのくらいの割合でいますか?
推計には幅がありますが、海外ではおよそ5〜10%ともいわれ、読み書きの障害と同じくらいの範囲です。つまり、算数にイライラしている子の大多数は、算数障害ではありません。2022年の文部科学省の調査では、「計算する」「推論する」に著しい困難があると先生が回答した小中学生は3.4%でしたが、これは診断の数ではありません。
算数障害が心配なとき、どこに相談すればいいですか?
まずは担任の先生に。そのうえで、学校の特別支援教育コーディネーターやスクールカウンセラー、地域の発達障害者支援センターや教育相談の窓口、発達を専門に診る小児科や児童精神科などが相談先になります。評価の結果によっては、通級指導教室などの支援につながることもあります。
算数障害と、算数への不安は同じですか?
いいえ。算数への不安は、本当はある力がストレスや怖さにじゃまされる感情の反応で、算数障害は、数の感覚そのものの育ち方のちがいです。似て見えたり重なったりすることもあり、見分けられるのはきちんとした評価です。



