5歳の算数、何ができればいい?(まだ気にしなくていいことも)

この記事の内容
結論から言うと:5歳ごろには、多くの子が10〜20くらいまで数を唱えられ、少ない物の山をひとつずつ数えられ、0〜9の数字の多くを読めて、どちらのお皿のおせんべいが多いかを言えます。もっとできる子も、まだの子もいて、この年齢ではどちらもたいてい問題ありません。チェックリストを見て不安になって検索したのなら、まずここだけでも読んでください。
私たちは小さな子ども向けの数のアプリをつくっていて、数に出会う5歳の子をたくさん見てきました。正直にお伝えできるのは、その「幅」です。同じ年齢で、どちらも順調な2人の子が、数についてできることで丸1年ちがうことがあります。日本の5歳は、年中の後半から年長にかけての時期。ここでは、力ごとに見た5歳の姿と4〜6歳の目安表、そして同じくらい大事な「まだ気にしなくていいこと」をまとめます。
チェックリストではなく、「幅」で考える
「小学校入学までにこれだけは」といったリストには、教材などを売る側がつくったものも多く、まるで入学試験の合格条件のように見えます。実際の国の指針は、それよりずっとおだやかです。
幼稚園・保育所・認定こども園の指針(幼稚園教育要領・保育所保育指針・幼保連携型認定こども園教育・保育要領、2017年告示)には、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」のひとつとして「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」が挙げられています。中身は、遊びや生活の中で数や形にふれる体験を重ね、興味や関心、感覚をもつようになること。到達すべき目標ではなく、育っていく方向を示したものだと説明されています。計算ができることは求められていません。
そして小学校の学習指導要領では、10までの数を数えることや数字の読み書き、10までのたし算・ひき算は、1年生の1学期に学校で学ぶ内容です。つまりそれらは入学の「条件」ではなく、1年生で学ぶ「中身」です。
5歳で本当に大切なのは、もっと小さくて、やさしいことです。物を数えることへの興味、いくつかの核になる考え方、そしてクレヨンを思いどおりに動かせるようになってきた手。ほかのことは、ここから育っていきます。
数える:5歳のよくある姿
「数える」という言葉には、2つの力が隠れています。ひとつは数のことばを順番に言うこと(数唱)で、5歳では10〜20くらいまでが多くなります。もうひとつが物を数えることで、ひとつずつさわって、ひとつの物にひとつの数を言い、最後の数が「全部でいくつ」かがわかることです。5歳では、10くらいまでなら安定して数えられる子が増えてきます。
日本語ならではのポイントもあります。11からは「じゅういち、じゅうに」と規則的なので、英語のように11〜19の言い方で大きくつまずくことは少ない一方、「いっぴき、にひき、さんびき」「いっぽん、にほん、さんぼん」といった助数詞の音の変化は、まだ揺れていて当然です。「さんひき」と言っても、数が合っていれば十分です。

10から100への長い道のりや、10の節目でのつまずきには、また別の時間軸があります。100まで数えられるのは何歳?にまとめましたが、短く言えば、100まで唱えられるのは6歳前後で、意味の理解はそのあとに続きます。
数字を読む・書く
数字を読む力は、たいてい書く力より先を行きます。5歳の子は、時計やカレンダー、エレベーターのボタンで0〜9のほとんどを指させる一方、自分で書く数字は大きく、よろよろで、ときどき左右が逆です。逆向きの3や5といった鏡文字は、書き始めのごく普通の段階で、7歳ごろまではよく見られ、それだけで心配のサインにはなりません。理由は鏡文字の数字で説明しています。
数字を書くことに興味があるなら、数字の書き方の教え方で、まっすぐな線でできた書きやすい数字から始める方法を紹介しています。日本では数字にも書き順があり、小学1年生のはじめに学校で習います。まだ興味がなくても、5歳では普通です。読む力のほうが書く力より一歩先を行くことは、よくあります。
多い・少ない・同じ:くらべる力
くらべる力は、算数らしく聞こえないので見すごされがちな、静かな節目です。でも、これは立派な算数です。2つのお皿をちらっと見て「こっちのほうが多い!」と訴える5歳は、量を見て判断し、差が小さいときには数えて決着をつけるという、立派な数の学びをしています。「ひとりにひとつずつね」と配ること、「多い・少ない・同じ」といった言葉は、1年生の算数のはじめに出てくる「ものとものとを対応させて、個数をくらべる」学習の、そのままの土台です。

形、パターン、そのほかのこと
数以外の算数の芽は、ふだんの遊びの中で自然に育ちます。まる・しかく・さんかくの名前、赤・青・赤・青…のような簡単なくり返しの続き、ボタンを色や大きさで分けること、「うしろ」「した」「となり」といった位置のことば、「高い」「重い」「いっぱい」といったくらべることば。どれも改まって教える必要はありません。積み木や洗濯物の仕分け、そして話し相手がいれば十分です。

4歳・5歳・6歳の目安をひとつの表に
どのマスも、広くて普通の範囲の「真ん中」として見てください。1年早くても1年遅くても、それ自体に大きな意味はありません。
| 力 | 4歳ごろ(年少〜年中) | 5歳ごろ(年中〜年長) | 6歳ごろ(年長〜小1) |
|---|---|---|---|
| 数を唱える | 10まで。ときどき飛ぶ | 10〜20まで | 100まで。10の節目で迷うことも |
| 物を数える | 3〜5個をひとつずつ | 10個くらいまで | 10〜20個、それ以上も |
| 数字を読む | 見慣れたいくつか | 0〜9のほとんど | すべての数字と、10より大きい数 |
| 数字を書く | はじめての大きな字 | いくつか書ける。鏡文字も普通 | ほとんどの数字。形がととのってくる |
| くらべる | 見た目で「多い」がわかる | 少ない数のグループで多い・少ない | 数えてくらべる |
| たす・ひく | 物を使って、ごく少ない数で | 指で5くらいまで | 10までを頭の中で。1年生で本格的に |
6歳から先の目安は、100まで数えられるのは何歳?と九九はいつから?にまとめています。
5歳で気にしなくていいこと
- 鏡文字の数字。7歳ごろまでは普通で、それだけでディスレクシアのサインにはなりません。
- 指を使って数えること。指は、子どもがどこにでも持ち歩ける数の道具です。使わせてあげてください。くわしくは指で数えるのはダメ?で。
- 4・7・9の読み方が揺れること。「よん」と「し」、「なな」と「しち」がまざるのは、大人も両方を使っているから。どちらでも、数が合っていれば十分です。
- 助数詞のまちがい。「さんひき」「ろくほん」も、言い方の規則を自分で探している途中です。
- 同じ物を2回数えること。1対1対応は最初から備わっているものではなく、育っていく力です。注意するより、遊びの中で数えるうちに安定していきます。
- プリントに興味がないこと。プリントは嫌がるのに階段を毎回数えている5歳は、順調です。階段が教科書です。
- お友だちより「遅れている」こと。5歳の幅はとても大きく、5歳の時点の差から、10歳でだれが算数を得意にしているかは、ほとんどわかりません。
相談したほうがいいのは、どんなとき?
ひとりで心配を抱えこむより、だれかに落ち着いて話を聞いてもらったほうがよい場面もあります。何かを数えることにまったく興味を示さない、明らかにちがう2つの山のどちらが多いかがわからない、以前できていたことができなくなった、数のことでのいら立ちが、退屈というより苦痛に見える、といった場合です。最初の相談先は、クラス全体を見ていて実際の幅を知っている園の先生です。全体的な発達については、かかりつけの小児科医や、自治体の子育て相談窓口も頼れます。お住まいの地域で5歳児健診が行われていれば、その場で聞いてみるのもよいでしょう。年長の秋ごろには、就学時健康診断もあります。
私たちのアプリの位置づけを、正直に
私たちのアプリ、99 Math Animalsは、ちょうどこの年齢から始まります。動物の小さなグループを数えて、答えを指で書く。5歳の子が育てている2つの力、物を数えることと数字の形を書くことを組み合わせたものです。就学準備のテストではありませんし、お子さまが「順調か」を判定するものでもありません。そんなことができるアプリはありません。5歳の子のために算数アプリを選ぶなら、算数アプリの選び方のチェックリストは私たちのアプリにもそのまま当てはまります。画面をまったく使わない方法なら、家でできる数あそびをどうぞ。
保護者の方からよくある質問
4歳(年少・年中)の算数は、何ができればいい?
目安としては、10くらいまで声に出して数える(ときどき飛んでも大丈夫)、3〜5個の物をひとつずつ数える、見慣れた数字をいくつか読む、まる・しかくなどの形の名前を言う、見た目ではっきり多いほうがわかる、などです。4歳では、できる数より興味のほうが大切です。
6歳(年長・小1)の算数の目安は?
100に向かって唱えられる、大きめのグループを数えてくらべる、ほとんどの数字を読み書きする、少ない数のたし算・ひき算を指や物を使ってする、といった子が多くなります。1年生の算数はこの上にどんどん積み上がりますが、幅は広いままで、真ん中あたりでもまったく問題ありません。
小学校入学前に、たし算はできたほうがいい?
できなくて大丈夫です。たし算・ひき算は、学習指導要領で1年生の算数として学校で学ぶ内容です。入学前は、10くらいまでの物を正しく数える、どちらが多いかがわかる、といった土台のほうが役に立ちます。
うちの子は算数が遅れている?
この年齢で、将来を左右するような遅れであることはまずありません。5歳の普通の幅は1年以上あります。相談したほうがよいのは、数えることにまったく興味がない、明らかにちがう量をくらべられない、できていたことができなくなった、という場合です。ネットより先に、園の先生に聞いてみてください。



