九九の覚え方:学校の唱え方を生かして、家では短く楽しく

この記事の内容
結論から言うと:九九は、一度にたくさんやらないほうが早く身につきます。ほぼ毎日の数分、一度に少しの九九、そしてタイムを競う練習のかわりに遊び。しかも山は見た目より小さく、81マスの九九表のうち、本当に覚える努力が必要なのは21個ほどです。残りは、お子さまがおそらくもう知っているきまりや、学校でくり返し唱えている段から自然についてきます。
私たちは小さな子ども向けの算数アプリをつくっていて、手書きの答えを読みとる仕組みを通して、たくさんの子がかけ算の問題に取り組む様子を見てきました。九九がすっと出てくるようになる子は、いちばん長く練習した子とはかぎりません。短く、ひんぱんに、ストップウォッチを持った大人がそばにいない状態で練習した子です。この記事では、その方法をまとめます。
九九を「覚えた」とは、どういう状態?
学校では、九九を声に出して唱えます。「ににんがし、にさんがろく…」と段の最初から順に言う上がり九九、9から1へ逆に言う下がり九九、順番をばらばらにして聞かれるばらばら九九。この3つは、そのまま「覚えた」の3つの段階になっています。
最初は、6×7を聞かれると「ろくいちがろく、ろくにじゅうに…」と6の段の頭から唱えて、ろくしちしじゅうにまでたどり着きます。これも立派な力で、どの子もここから始まります。「覚えた」と言えるのは、ばらばらに聞かれても、「ろくしち」と聞いただけで42が1秒ほどで出てくる状態です。学校がこれを大事にするのには、実用的な理由があります。答えがすっと出てくれば、頭の作業スペースが空いて、3年生のわり算や文章題のような、じっくり考えたいことに使えるからです。学習指導要領の解説でも、九九の唱え方を記憶しておけば答えを簡単に求められることが、かけ算のよさとして挙げられています。
唱えている段から「ぱっと出る」へ進む道は、プレッシャーを増やすことではありません。思い出す回数を増やすことです。表を見て読むのではなく、自分の頭から答えを引っぱり出すたびに、その九九は少しずつ定着していきます。「見せるより、聞く」。このひとつの考え方が、以下のすべての土台です。
81マスのうち、本当に手ごわいのは21個
九九表は81個も覚えることがあるように見えるので、机の前に貼るとそれだけで気が重くなります。でも、ほかの知識から自然に手に入るものを順に取りのぞいてみると、見え方が変わります。
| 取りのぞくもの | のこりのマス |
|---|---|
| 九九表のマス全部 | 81 |
| 1の段と、1をかける列(どんな数も1をかけるとそのまま) | 64 |
| 2の段と、2をかける列(2とびと同じ) | 49 |
| 5の段と、5をかける列(5とびと同じ) | 36 |
| 入れかえると同じもの(3×8と8×3は同じ答え) | 21 |
21個。これが山の全体です。3・4・6・7・8・9の段が交わるところで、なかでも手ごわいのは6×7、7×8、7×9、8×9のあたりに集まっています。この表は、ぜひお子さまに見せてあげてください。「九九表のほとんどは、もうわかっているんだよ」のひとことで、新しい九九をひとつも覚えないうちから、取り組む気持ちが変わります。
ただし、学校では全部の段をひとつずつ唱えて身につけていきます。21個というのは「ほかを飛ばしていい」という意味ではなく、「家で特に時間をかける価値があるのはここ」という目印です。
1日5分、続けやすい練習のしかた
方法の全体はこれだけです。5分ほどで、朝ごはんのときでも車の中でもでき、必要なのは大人の声だけです。
- 今週の3つを決める。段まるごとではなく、九九を3つ。付箋に書いて冷蔵庫に貼り、来週はまた3つ。
- 見せずに、聞く。やさしく口で問題を出し、答えは頭の中から出してもらいます。効果があるのは思い出すことそのもので、表を読み返すだけでは、くらべるとほとんど身につきません。
- 知っている九九をまぜる。新しい九九ひとつに、もう言えるものを2つ。言える喜びが楽しさを保ち、くり返し出会うことが忘れるのを防ぎます。
- 出てこないときは、作り直してもらう。「ろくしちがわからない…でも、ろくろくさんじゅうろくに6をたして42」。これはずるではなく、九九ができあがっていく途中です。
- 楽しいうちにやめる。5分でおしまい。できれば言えた問題で終わります。今日たくさんより、明日もう一回です。

学校で九九カード(表に式、裏に答えのカード)や、先生や家の人の前で段を唱えてサインをもらう「九九チャレンジ」「九九検定」のようなカードが配られたら、それがそのまま家での練習の軸になります。家の人の役目は、試験官ではなく聞き役です。つまっても答えを言わずに数秒待ち、言えたらいっしょに喜ぶ。唱え方は学校で習った言い方(「しちく」「はっく」など)にそろえてあげると、子どもが迷いません。どの段から習うかや学年ごとの流れは、九九はいつから?にまとめています。
つまずきやすいところと、役に立つコツ
九九のコツはたくさん出回っていますが、見ていて楽しいだけのものも少なくありません。実際に役に立つのは、次のようなものです。
- 「し」と「しち」をはっきり。九九では4を「し」、7を「しち」と言うので、耳で聞くとまぎれやすくなります。しく36(4×9)としちく63(7×9)は、答えの数字まで入れかわっているので、特にまちがえやすい組です。ゆっくり、はっきり唱えるだけで、かなり防げます。
- 9の段は指で。両手の指10本を立てて、かける数の指を折ります。9×4なら左から4本目。折った指の左にある指が十の位(3)、右にある指が一の位(6)で36。9の段すべてで使えます。
- 9の段の答えのきまり。9の段の答えは、十の位と一の位をたすと9になります(18、27、36、45…)。十の位は、かける数より1小さい数です。子どもはこのきまりを見つけるのが大好きです。
- 2倍でつなぐ。4の段は2の段の2倍、8の段は4の段の2倍。2倍ができる子は、忘れた8の段にも2歩で落ち着いてたどり着けます。
- 同じ数どうしを目印に。ろくろく36、しちしち49、はっぱ64は、表の中の目印になります。しちしち49がわかれば、苦手なしちは56は、そこに7をたすだけです。

遊びながら覚える九九
トランプ1組とさいころ2つがあれば、だいたいのことはできます。どれも、思い出す練習を遊びの形にしただけです。
- トランプ九九。絵札と10を抜いたトランプを2人で分け、1枚ずつめくって、かけた答えを先に言えた人が2枚とも取ります。力の差が大きいときは、大人は6〜9の段の問題だけ答えます。
- さいころ対決。さいころを2つ振ってかけ算し、交代で。最大が6×6なので、手ごわい部分の入り口として、ちょうどよい準備運動になります。
- 手づくり九九カードで神経衰弱。式を書いたカードと答えを書いたカードをつくって、ふせて並べ、ペアを探します。カードをいっしょにつくること自体が、1回分の練習になります。
- 生活の中の九九。卵パックは5個ずつ2列、タコの足は8本ずつ、手の指は5本ずつ。駐車場での「あの車3台で、タイヤはいくつ?」も、立派な思い出す練習です。
- くらべるのは昨日の自分。言えた段にシールを貼る、昨日の自分の記録をこえる。きょうだいとではなく、自分自身と。自分のものだと感じられる進歩が、いちばん長続きするやる気になります。

タイムを計る練習は、どう考えればいい?
時間を計る練習は、いかにも効果がありそうに見えます。学校でも、上がり九九を何秒で言えるかを計ることがあります。けれども子どもによっては、時計があると課題そのものが変わってしまいます。思い出すかわりに、こわさと戦うことになるのです。スタンフォード大学の算数教育グループyoucubedは、論文「Fluency Without Fear(恐れのない流ちょうさ)」などで、時間のプレッシャーが一部の子どもの算数への不安と結びついていること、そしてすらすら言える力は競争からではなく、理解と使うことから育つことを、長く訴えてきました。
実際には、こう考えるとよいでしょう。速さは、九九をよく知った結果であって、覚えるための方法ではありません。学校のタイム計測は先生の方針として尊重しつつ、家での練習は時計なしで、カードは子どもに持たせます。家は、「しちはごじゅうろく」に3秒かかってもいい、落ち着いた場所であってほしいのです。
どのくらいで覚えられる?
何日ではなく何か月。それは失敗ではなく、もともとそれくらいかかるものです。授業では10月から12月ごろの2か月半ほどで九九すべてに出会いますが、そこで全部が定着するわけではなく、3学期の復習や3年生のわり算で毎日使ううちに、しっかり身についていく子がたくさんいます。1日5分の練習を続けると、やさしい段はたいてい数週間で安定し、手ごわい21個はひと学期から2学期ほどかけて落ち着いていきます。途中で忘れるのも想定内です。先月覚えた九九が抜けても、思い出すたびに戻ってくるのが速くなります。その、忘れては思い出すくり返しこそが、覚えるということです。
思ったより時間がかかっていても、1日の時間を増やすことが解決になることはあまりありません。一度の量を減らし、日数を増やし、遊びを増やしてみてください。何か月も同じ九九で止まっている、九九のことで強い不安が続いているといった場合は、クラス全体を見ている担任の先生に相談するのが最初の一歩です。
私たちのアプリの位置づけ
私たちのアプリ、99 Math Animalsがいちばん得意なのは、九九を唱える前の段階です。「りんごが3こずつ入ったかごが4つ」のように、同じ数ずつのまとまりとしてかけ算を見ること。これがあると、九九が意味のない答えの壁になりません。
かけ算の問題に、子どもが指で数字を書いて答えるモードもありますが、九九81問を順にドリルするためのアプリではありません。この記事に書いたことは、画面がなくてもすべてできます。練習用のアプリを比べるときは、私たちのようなアプリにもあえて厳しい算数アプリの選び方のチェックリストを、九九のもとになる数の遊びは家でできる数あそびをどうぞ。
保護者の方からよくある質問
九九はどのくらいの期間で覚えられますか?
1日数分の練習を続けると、2の段や5の段などやさしい段は数週間で安定し、6〜9の段はひと学期から2学期ほどかけて落ち着くのが一般的です。授業で九九を学ぶのは2年生の秋の2か月半ほどですが、定着はそのあとも続きます。何か月かけて少しずつ、が普通のペースです。
九九がなかなか覚えられない子には、どうすればいいですか?
量を減らして、日数を増やすのが近道です。1週間に新しい九九は3つ、知っているものとまぜて、表を見せずに口で聞きます。忘れたら知っている九九から作り直してもらい(6×7なら6×6に6をたす)、タイムは計りません。トランプやさいころの遊びも、思い出す練習になります。
7の段が覚えられません。コツはありますか?
7の段は「し」と「しち」が聞き分けにくく、多くの子が苦労する段です。でも、7×2〜7×6は2〜6の段ですでに出会った答えの入れかえで、7×1はそのまま7です。本当に新しいのは、しちしち49、しちは56、しちく63の3つだけ。しちしち49を目印に、7をたして作り直す練習が効きます。
九九カードは効果がありますか?
はい、落ち着いて使えば効果的です。少ない枚数で、時間を計らず、裏返す前に答えを言ってもらいます。カードが効くのは、思い出すことを求めるからです。スピード競争になると、子どもによっては不安が増えて、かえって逆効果になることがあります。



